アプリケーション

GlycoStation™ 糖鎖解析(糖鎖プロファイリング)技術のアプリケーション


GlycoStation™は、以下のように幅広い分野で活用できるシステムです。

LecChip™で測定できるサンプル、また測定方法も様々です。GlycoStation™は、簡易的、高感度、液層測定可能といったこれらの特徴ゆえに、汎用性の広いシステムとなっています。

GlycoStationの最大の特徴は、簡易的、液層計測といったことは勿論ですが、その感度にあります。例えば、血清中に存在する微量なマーカーをスクリーニングしようとした場合、数mL量の血清から情報を取れるかどうか?が極めて重要になります。LC-MS/MSは、タンパク質同定、N-型糖鎖の構造同定で、非常にパワフルなシステムですが、こういった目的では、その感度が問題になります。GlycoStationは、糖鎖構造の完全同定こそできませんが、そういった微量サンプルから糖鎖構造の違いを鋭敏に捕らえることに関しては極めてパワフルなシステムであるということができます。特に、糖鎖の異性体(例えば、α2,3-Siaとα2,6-Sia)の同定はレクチンアレイが最も簡便な手法であり、他の方法では得られない簡便性が手に入ります。

クルードサンプルからの糖鎖プロファイリング測定


たとえば、GlycoStation™システムでは、細胞のライセート、細胞膜・細胞質画分等の細胞抽出液といったクルードサンプルのディファレンシャル解析が可能です。その一例として、CHO細胞の膜画分に対するLec1変異細胞のディファレンシャルプロファイリングの結果を示します。N結合型糖鎖認識レクチンにおいて差異は顕著であり、O結合型認識レクチンでは小さくなっています。ディファレンシャルプロファイリングにより簡単に得られたいくつかのシグナルデータがあります。分岐した複合型N結合型糖鎖認識レクチン(PHA(L), PHA(E), ACG)、α2,3-Sia認識レクチン(MAL I)、ガラクトース認識レクチン(RCA120)のシグナルは、Lec1変異細胞で減少がみられます(左下グラフ参照)。ハイマンノース型のN結合型糖鎖認識レクチン(GNA, HHL, PWM, Calsepa, PSA, LCA)は、Lec1変異細胞では増加がみられます(右下グラフ参照)。これらの結果は、Lec1が糖転移酵素GlcNAc-T1の欠損であることから考えて合理的です。

EPOの糖鎖プロファイリング測定


EPO(erythropoietin)は、貧血の薬ですが、EPOに限らずバイオ医薬品はタンパク質の糖鎖修飾で大きな影響を受けます。日薬理誌(Folio Pharmacol, Jpn.)131, pp.291-299によれば、2か所に新たにN型糖鎖を導入した第二世代のEPOでは、第一世代のEPOに比べて造血効果が改善されています。第一世代と第二世代のEPOの糖鎖の違いをプロファイリングしてみたものが下図になります(赤が第一世代EPO、青が第二世代EPO)。PHA-Lの違いは、4本鎖N型糖鎖が第二世代で多いこと、MAL_Iが強いことからN型糖鎖の末端がα1,3-Siaで修飾されていること、AOL, AALからコアフコースの修飾が第二世代で多いこと、ポリラクトサミンを認識するLELやラクトサミンを認識するSTLらにも第一世代と第二世代の間に差があることが簡単にわかります。このようにして、レクチンマイクロアレイは、バイオ医薬品の糖鎖修飾の違いを簡単にプロファイリングすることが可能であり、バイオ医薬品の開発効率アップに大きく貢献できます。なお、発現株の培養上清液からも分泌タンパク質の糖鎖プロファイリングを行うことが可能です。

新規バイオマーカー探索:抗体オーバーレイ・レクチンマイクロアレイ法


たとえば、レクチンマイクロアレイでは、抗体オーバーレイ法を用いることで、クルードサンプル中の特定タンパク質の糖鎖を調べることも可能です。ガン細胞の血小板凝集因子として働くムチンタイプのシアロ糖タンパク質Podplaninの研究においても、その手法は用いられています。抗体は、Podplaninが誘導した血小板凝集を抑制する高反応性の抗Podplanin抗体NZ-1をビオチン化して用いています。レクチンマイクロアレイにPodplaninサンプルをアプライして反応後、そこにビオチン化NZ-1を反応させ、Cy3標識ストレプトアビジンでの検出を行っています。Lec1、Lec2、Lec8に発現させたPodoplaninサンプルでのレクチンマイクロアレイの結果から、シアル化されたcore1構造をもつことが示唆されています。さらに、15の膠芽細胞腫セルラインのうちポドプラニンの発現が高く、血小板凝集を誘導していたLN319のPodoplaninサンプルの結果から、disialyl-T抗原、sialyl-T 抗原、sialyl-Tn抗原をもつことが示唆されています。

生細胞での細胞表面グライコームの測定


細胞において、その種類、分化度、悪性変異により、発現している糖鎖全体”グライコーム”が変わるといわれています。弊社のシステムでは、Cy3標識したタンパク質をサンプルとして、その糖鎖を解析をするのが一般的でした。しかし、最近の研究では、 Cell-Tracker Orange CMRA 試薬を用いて、細胞に代謝的に標識を行ったサンプルを用いることで、細胞表面に発現している糖鎖全体”グライコーム”を解析することも可能となっています。 つまり、糖タンパク質以外の細胞表面に発現している糖脂質をも含んだ糖鎖全体も解析も可能となっているのです。CHOとその糖鎖付加欠損変異細胞、また野生型とβ1-3-N-acetylglucosaminyltransferaseIIノックアウトマウスの脾細胞のディファレンシャルプロファイリングで、糖鎖付加の表現型とよく合致される結果が得られています。
さらに、K562細胞の細胞表面糖鎖を分化前後での比較においても、分化した細胞でO結合型糖鎖の発現においての大幅な増加がみられています。本手法は、哺乳類細胞表面の糖鎖全体”グライコーム”変化のプロファイリングのための革新的なプロトコルであり、生細胞に適用できます。

ホルマリン固定組織片の糖鎖プロファイリング測定


ホルマリン固定組織片の糖鎖プロファイリング測定プロトコルも確立されています。正常大腸組織片(n=12)と大腸癌組織片(n=28)の比較で、いくつものレクチンで違いがみられています。中でも、WFAではGradeI+II,GradeIII共にP<0.0001という結果が得られ、WFAの組織染色の結果との相関性も確認されています。本手法は、細胞数にしておよそ500個という超高感度な測定方法です。ホルマリン固定により架橋を十分に解くため、免疫組織染色などで行われている抗原賦活化処理を行うと蛍光標識率を上げることができます。また、脱パラフィン操作により、糖脂質の除去も行われています。

Stem Cell(hES, iPS, MSC etc.)の評価と再生医療


mES(mouse ES)、F9(mouse embryonic carcinoma cell)、およびretinoic acid(RA)で分化誘導をかけた細胞群が、階層的クラスタリング法、そしてまた主成分解析法を用いることで、峻別にレクチンマイクロアレイで判別できることが示されました。この成果は、国立成育医療センターの豊田先生、梅澤先生らによって、ISSCR2009で発表されました。この手法は、hES, iPS, MSCにも適用可能であり、かつてない高精度な状態判別が簡易的に可能になります。

腸内細菌の糖鎖とプロバイオティクス


腸内細菌は人の免疫、そして健康と長寿に大きく係わっていることが知られています。腸管免疫系の活性化には腸内細菌の糖鎖が深く関係していることが指摘されていますが、それを簡易に調べる方法が今までありませんでした。しかし、腸内細菌をSYTOX Orangeでラベリングし、レクチンマイクロアレイを使うことで腸内細菌表面の糖鎖プロファイルを簡単に調べることが可能になったのです。この成果はヤクルト研究所と産業技術総合研究所との共同研究であり、プロバイオティクスを推進する上で大きな武器になるとして着目されています。


参考文献